事業を始めると気になる税金
サラリーマン時代は毎月の給与から税金が源泉徴収され、年末調整で少し戻ってくるというパターンが多いです。
そのため、税金を納めているという感覚が非常に鈍くなっていると思われます。
しかし、自分で事業を始めると税金のことが気になってきます。
事業を開始して最初の確定申告を迎えてもいないのに、とにかく税金を減らしたいと考える方もいます。
今回のコラムでは、札幌市東区で税理士(所属税理士)をしている筆者が、税金を減らすことばかりを考えていると、あまりいいことがないということについて解説していきます。
税金ばかり気していませんか?
事業をしていると、当然たくさん稼ぎたいという気持ちは誰しもが持つと思います。
他方で、税金はあまり払いたくないと思う気持ちも理解できます。
しかし、税金のことばかり気にしていてもどうしようもありません。
税理士の私がこんなことを言うのは不適切かもしれませんが、事業という枠の中に税金が占める部分は、ほんのわずかなスペースでしかないと思うのです。
税金のことよりも考えなければならないことが山ほどあります。
営業のことであったり、仕事の効率化などもそうです。
なによりも、お客様のお役に立つためにはどうしたらよいのかということが大事です。
税金ばかり気にすることの弊害
税金を減らすことばかり考えていると、次のような弊害が生じます。
それは、当然望ましいことではないはずです。
それなのに、節税という思考が頭から離れなくなってしまい、時には脱税に近い考えをおこす人までいます。
無駄が支出が増える
税金を減らすためには経費を使えばいいということで、それほど必要ではないものにお金を使ってしまうケースがあります。
もちろん、利益がたくさん出る見込みなので、業績アップや効率化につながることにお金を使うのであればそれほど問題ではありません。
そうではなく、とにかく経費を使えばいいという考えだと、何もせずに納税した場合よりも手持ちのお金が減るだけです。
生活費が足りなくなる
事業による収入の他に収入源がない場合は、事業所得が生活費ということにになります。
ここから税金、国民年金や健康保険、衣食住すべての支出をしなければなりません。
もちろん、事業所得の額と現預金の額は一致しませんが、事業所得が増えなければ現預金も増えません。
税金を払いたくないばかりに、生活費まで少なくなっていまうのは誰もが望まないことではないでしょうか。
生活費を経費に入れる等の不正
事業所得が少なくても生活できるという状態は、貯蓄や誰か他の人からの援助などがなければあり得ません。
そこで、生活費を強引に経費にするという手法がとられることがあります。
食事は実態がないのに取引先との打ち合わせということにする、家賃は仕事で使っている実態がない生活スペース部分も経費に計上するなど、ありとあらゆるものを事業に必要があるとこじつけて経費に入れる方がいます。
最悪の場合は、ごみ箱から拾ってきたレシートを自分が支出したかのように装う人もいます。
こういう手法をあたかも賢い節税のように流布している人がいますが、信じてはいけません。
たまたまお咎めがないだけで、いつか痛い目にあいます。
本来経費ではないものを経費にすることは、不正です。
程度の差はあっても脱税です。
事業所得が低い状態が続けば、「どうやって生活しているのだろうか」という疑問を税務署が持つのはあたりまえです。
税務調査に入ってみようということになるかもしれません。
信用力が無い
事業を何年もやっているのに、事業所得が低いままだと信用力がありません。
あの人のことは信じられないという信用ではなく、お金の面での信用です。
事業所得が低ければ、住宅ローンなどを組むのも難しいでしょう。
これしか稼げない人が借入の返済をできるだろうかと思われるのは当然です。
場合によっては家賃が高めの物件を賃貸することすら難しいかもしれません。
また、交通事故にあった場合などの所得補償でも不利にはたらきます。
事業所得が低ければ、当然補償も低いものとなります。
事業所得を増やそう
ここまで見てきたように、税金を減らしたいがために事業所得を減らしても、いいことがありません。
せっかく自分で事業をしているのですから、当然収入を増やしたいはずですよね。
おそらく、税金を減らしたいというのは、手持ちのお金を減らしたくないということなのだと思いますが、なぜか、それが反対の方向にいってしまうのです。
現行の所得税法のうえでは、手持ちのお金を減らさないで、かつ、税金も減らしたいというのは無理難題に近いものがあります。
事業所得と生活費がイコールであると考えれば、当然に事業所得を増やすことが手持ち現金を増やすことの絶対条件になるのです。
もちろん、税金や国民健康保険などがついてまわりますから、そう単純なものではないことは充分承知のうえです。
そうはいっても、納税をおそれるあまり事業所得を増やさないのであれば、何も始まりません。
所得がなければ生活が成り立たないのです。
「どうしたら税金を減らせるだろう」というマインドから、「どうしたらたくさん収入が上がって手持ちのお金が増えるだろう」というマインドに変換することをおすすめします。
そのほうが絶対楽しいですよ。