家族への給与‐青色事業専従者給与とは
札幌市東区の税理士が執筆するお役立ちブログ。
今回のテーマは、「家族へ支払う給料を経費にすることができる」です。
青色申告の特典として、一定の要件を満たせば、家族に支払う給料は経費になります。
白色申告の場合でも同様に家族への給料を経費にできますが、金額の上限があります。
ですから、白色申告と比べると青色申告のほうが節税になるのです。
しかし、節税のためだけに家族に事業を手伝ってもらうのであれば、オススメできません。
今回もまず復習しようね。青色申告の特典、どんなものがあったかな。
このほか、隠れたメリットとして、推計課税がされないということがあります。
青色申告の特典についての解説、後半戦に突入だね。今回は、「家族へ支払う給料を経費にすることができる」について一緒に勉強しようね。
ちょっと待って!働いてもらって給料を支払うんだから、経費にできるのは当然じゃないの?従業員が家族だったらタダ働きさせないとダメってこと?
おっ、するどいツッコミ。吾郎くんの言うとおりだよね。
でも、所得税法では一緒に生活する家族(生計を一つにする親族)に支払うものは、基本的に経費にできないとされているんだ。
例えば、夫が妻名義の土地と建物を借りてお店を経営している場合に、賃料を妻に支払っても経費にはできないんだよ。
そうなんだ。なんか納得できないけど、法律で決められているのならしかたがないか・・・
そう、納得できない気持ちはわかるよ。多くの人が納得できないと思っているから、この取り扱いを題材にした論文もたくさんあるし、裁判も提起されているんだ。
でも、給料は経費にできるってことが今回勉強することなんだよね。白色申告と青色申告では何が違うの?
白色申告でも家族に支払った給料は経費にできるんだけど、金額に上限があるんだ。青色申告の場合は、金額に上限はないよ。でも、上限がないからといって、働きに見合った金額じゃないとダメだよ。それと税務署に届出書を提出することが必要になるよ。
何でも届出書がいるんだね😩
「青色事業専従者給与」の解説
のりあき税理士と吾郎くんが話していた「青色事業専従者給与」という特典。
その内容はどういうものなのか、一緒にみていきましょう。
青色事業専従者給与とは、大ざっぱに言えば、青色申告をしている者(以下「事業主」といいます。)の商売を手伝っている家族に支払う給与のことですが、法律で要件が定められていますので、ひとつずつ確認していきましょう。
※のりあき税理士と吾郎くんの会話のなかでは、一般的な響きの「給料」という用語を使っていますが、ここでは「給与」という用語を使って解説していきます。厳密には、給料と給与とは意味が異なりますが、ご了承ください。
誰へ支払う給与か
- 事業主と生計を一にする配偶者その他の親族へ支払う給与が該当します
生計を一にするというのは、同じ財布で生活していることと説明される場合が多いです。これは、物理的に財布が一つしかないということではなくて、生活するための資金を共有するという意味です。
生計を一にするということについては様々な論点がありますが、青色専従者給与を考えるうえでは、事業主の収入で生活している家族という捉え方でいいでしょう。
なお、給与の支払いを受ける者の年齢が、その年の12月31日時点で15歳以上であることも条件となっています。
そもそも、中学生以下であれば専従の条件(次の項目で解説します)を満たさないので、15歳以上というのはあまり気にしなくてもいいでしょう。
専従という条件
- 6ヶ月を超える期間(一定の場合は専従できる期間の半分を超える期間)事業主の事業に専ら従事することが必要です
専従というのは、文字どおり、事業主の事業に専ら従事することです。ですから、他にアルバイトをしているという場合などは、専従という条件を満たしません。また、1年の半分を超える期間(6ヶ月を超える期間)にわたって従事しなければ、専従とはいえません。
ただし、一定の場合には必ずしも6ヶ月を超える期間でなくても、条件を満たします。
例えば結婚したのが9月であれば、配偶者として従事可能な期間は9月~12月の4ヶ月間です。この場合、その結婚した年については、2ヶ月を超える期間従事していればOKということになります。
届出書の提出
- 一定の事項を記載した「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署へ提出することが必要です
「青色事業専従者給与に関する届出書」には、青色事業専従者の氏名、職務の内容、給与の金額、支給期などを記載します。
用紙は、国税庁のサイトで入手できます。こちらのリンクからPDFをダウンロードしてください。
PDFの2頁目に記入方法が図解されているので、そんなに難しくないと思います。
注意したいのは、金額(月額)欄の記入についてです。この欄に記入する金額は、支給する金額ではなくて、支給するかもしれない最大の金額を記入するのがポイントです。
もし、ここに記入した金額を超える給与を支払う場合は、変更届出書を提出する必要があります。
また、当然ではありますが、ここに記入したからといって、働きに見合っていない金額は認められません。
「家族以外の人に給与を払うときにも同じ金額を払うだろうか」ということを基準にして考えれば、払いすぎを防げると思います。
今まで給与を誰にも支払ったことがなく、青色専従者給与がはじめて支払う給与だという場合は、給与支払事務所等の開設届出書を同時に提出する必要があります。
この届出書も、国税庁のサイトで入手できます。こちらのリンクからPDFをダウンロードしてください。
届出書の提出期限
また、提出期限にも注意してください。期限はそれぞれ、次のようになっています。
- その年の1月1日から青色専従者とする場合 → その年の3月15日まで
- その年の1月16日以後に事業主が開業したときや、新たに専従者がいることとなったとき → そのときから2ヶ月以内
届出書関係は、期限ギリギリではなく、「すぐに提出」ということを心がけましょう。
その他の注意点
- 青色専従者となった場合には、その者は事業主の配偶者控除または扶養控除の対象となりません。
配偶者控除または扶養控除は、事業主の所得から38万円控除できます。よって、青色専従者給与の金額が38万円以下だと青色専従者にしても税金上のメリットがありません。
青色申告の場合はだいたい理解できたよ。
ところで、白色申告の場合は金額に上限があるって言ってたけど、いくらなの?
ごめん、ごめん。説明していなかったね。白色申告の場合の専従者給与は、次のうちどっちか低い金額が上限になっているよ。
- 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
- この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額
つまり、最大でも86万円ということになるよ。
えっ!白色申告は最大でもそれだけなんだ・・・
やっぱり青色申告ってお得なんだねぇ😍
そうだね。たしかに事業主の税金が減るという効果はあるね。でも、お金を増やすことを考えれば、配偶者や家族は外で働いて給料をもらってくるほうがいいと思うんだ。
例えば、事業主の税率が所得税と住民税を合わせて20%だった場合に、青色専従者給与を100万円支給したときは、事業主の税金は、100万円の20%で20万円減るよね。
もしこれが青色専従者給与ではなく、よそで働いて給料をもらってきたとしたら、配偶者控除または扶養控除をつかえるので事業主の税金は約7万円減るよ。
税金だけ比べるとその差が13万円だけど、現金の残高を考えると・・・
青色専従者の場合は、家族という単位で考えると100万円給料をもらっても、もらっていないのと同じ。お金の増加額は、減った税金の20万円だけということになるんだね。
よそから給料をもらえば、もらった分と事業主の税金が減った分で107万円が増加額と考えることができるのか!
吾郎くん、計算すごいね!そのとおりだよ。
さらに、青色専従者として働いていて、事業主の商売が立ち行かなくなった場合、他に収入源がなければ家族全員が路頭に迷うことになるよね。
でも、青色専従者給与がすべてダメと言っているわけではないよ。
ぼくが一番言いたいのは、もし節税のためだけに家族に働いてもらおうと考えるのであれば、そんなに得しないよということなんだ。
節税という言葉には魔力があるみたいで、経営者の判断を鈍らせることがあるんだよ。吾郎くんも気をつけたいところだね。
そっか・・・
節税を考えるよりも、まずは、お客さんにたくさん喜んでもらえるようにお店の経営をがんばるぞぉ。
札幌市東区の税理士、木津憲亮(きつけんすけ)です。
1976年1月11日生まれ、奥尻島出身。
私は、個人事業主や小さな会社を専門に応援する税理士です。
このブログでは、個人事業主の方や小さな会社の経営者様が間違った知識で失敗したり、知らずに損をしたりすることのないようにという願いをこめて情報を発信しています。
あなたの夢の実現に、少しでもお役に立てれば幸いです。
プロフィール詳細はこちら