所得税の青色申告特別控除
札幌市東区の税理士が執筆するお役立ちブログ。
今回のテーマは、「お金の支払なしで55万円(65万円)分の経費と同じ効果」です。
青色申告には、様々な特典があります。
なかでも、最も恩恵を受けられるのが青色申告特別控除。
青色申告特別控除とは、お金の支払をしなくても一定額を経費と同じように収入から差し引くことがでるものです。
この青色申告特別控除は、法律改正で、控除できる金額が65万円から55万円となりました(令和2年分の所得税から)。
ただし、今までどおり65万円控除できる場合もあります。
今回はそのへんも含めて解説していきます。
さてさて、今回から青色申告のメリットについて一緒に勉強していこうね。
待ってました!やっぱりいいことがあれば帳簿を頑張ってつくる気持ちにもなるしね。
たしかに。
青色申告をする人は、様々な特典が受けられるというメリットがあるよ。次の5つが代表的な特典なんだ。
このほか、隠れたメリットとして、推計課税がされないということがあります。
なにがなんだかわからないよ~。これじゃあがんばれない
大丈夫だよ。1つずつわかりやすく解説するからね。
まず、今回解説するのは、1の青色申告特別控除(最大65万円)です。
ところで、吾郎くんは、税金(所得税)は何に対してかかってくるかわかるかい?
うぅんと…商売でもうかったらかかるんだったような…
そうだね。おおざっぱに言えばそんなかんじだよ。それじゃあ、いくらもうかったかはどう計算するか。ざっくりいうと、売上から仕入を引いて、いろいろな経費を引いて残ったのが「もうけ」ということになるね。
ぼくのお店の場合は、お客さんにハチミツを売った金額からハチミツを仕入れた金額を引いて、その他、電気代とか文房具代とかいろいろな経費を引いた残りの金額ということでいいかな?
そのとおり。吾郎くん、意外とのみこみが早いね。そうやって計算した「もうけ」からさらに一定額を引けるのが「青色申告特別控除」だよ。
意外って💦
ということは、「もうけ」が少なくなるから税金がかかる金額も少なくなる?
またまた正解!しかも、この「青色申告特別控除」は、他の経費と違ってお金を払っていないのに最大で65万円も「もうけ」から引くことができるという、とってもお得なものなんだよ。これなら帳簿をがんばってつける気持ちになるよね。
Yes,I can!
青色申告特別控除の詳細
のりあき税理士と吾郎くんが話していた「青色申告特別控除」。
「もうけ」から引くことができるということですが、その内容はどういうものか一緒にみていきましょう。
適用される所得の種類
青色申告特別控除は、吾郎くんのように小売店の経営などで事業所得を得る方と、アパートやマンション、土地の賃貸業などで不動産所得を得る方が受けられます。
適用される条件
青色申告特別控除を受けるには、次の3つの条件を満たすことが必要です。
- 複式簿記(正規の簿記)で取引を帳簿に記録すること。
- 「もうけ」から引く金額を確定申告書に記載して、貸借対照表と損益計算書をと一緒に提出しすること。
- 決められた期限まで(法定申告期限内)にこれらの書類を提出すること。
難しそうに思うかもしれませんが、会計ソフトを利用することで複式簿記による帳簿付けができますし、貸借対照表と損益計算書の作成、確定申告書の作成もできます。
ただし、ある程度の知識が必要ではないかと思います。
よく、会計ソフトの広告などで「簡単に」と表現されていますが、そこまで簡単にできるかというと疑問です。
ワンクリックですべてが自動でできると思うのは間違いです。
いくら引けるか
青色申告特別控除は、次の3つの区分によって、それぞれ引ける金額が決まっています。
- 電子帳簿保存を行っているか、e-Tax(国税電子申告・納税システム)で確定申告を行う場合 → 最大65万円
- それ以外の場合 → 最大55万円
- 複式簿記による帳簿ではなく、簡易帳簿を作成する場合・事業的規模に満たない不動産所得の場合 → 最大10万円
65万円控除を目指す場合、電子帳簿保存ではなく、e-Taxで確定申告しましょう。
電子帳簿保存は厳格なルールに従う必要があり、かなりハードルが高いです。
それに比べて、e-Taxで確定申告するのは慣れれば難しくありません。
令和元年までは、最大65万円が控除され、最大55万円という区分はありませんでした。
令和2年からこの区分ができた理由は、政府が税務の電子化をより進めたいということだと思われます。
3つ目の10万円控除について補足します。
まず、簡易帳簿の作成については考えなくていいです。
なぜなら、会計ソフトを使うのであれば複式簿記による帳簿作成ができますから、あえて簡易帳簿をつくる必要がないのです。
簡易帳簿といっても、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳の5つを作成することになります。
手書きでは大変です。結局会計ソフトを利用したほうが楽ということになり、そうであれば、複式簿記でということになりますね。
次に、事業的規模に満たない不動産所得について補足します。
これは、貸している不動産の物件数が少ない場合を指します。
一般的に、戸建て家屋なら概ね5棟以上、アパート・マンションなら概ね10室以上を貸していれば、事業的規模と考えていいといわれています。
ですから、事業的規模ではない場合、たとえ複式簿記による帳簿を作成していたとしても、最大で10万円の控除しかできません。
札幌市東区の税理士、木津憲亮(きつけんすけ)です。
1976年1月11日生まれ、奥尻島出身。
私は、個人事業主や小さな会社を専門に応援する税理士です。
このブログでは、個人事業主の方や小さな会社の経営者様が間違った知識で失敗したり、知らずに損をしたりすることのないようにという願いをこめて情報を発信しています。
あなたの夢の実現に、少しでもお役に立てれば幸いです。
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