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租税回避を推奨するのは税理士の仕事か?

あなたは租税回避という言葉を聞いたことがありますか?
脱税や節税は聞いたことがあると思いますが、「租税回避」はあまり聞いたことがないかもしれませんね。

今回のコラムは「租税回避を推奨するのは税理士の仕事か?」と題して、租税回避について札幌で税理士(所属税理士)をしている筆者が検討しました。

租税回避とは

租税回避とは、簡単にいうと、法の抜け穴をついて税金がかからないようにすることや税金がかかったとしてもその額が少なくなるようにする行為をいいます。
そして、その行為は「普通はそんなことやらないよね」というようなことが多いです。

居住用賃貸マンション経営における自動販売機作戦や金地金スキームなどは、租税回避の例だと私は考えます。

いずれも、本来は消費税の還付を受けられないところ、通常はやらないであろう一定の取引を行うことによって消費税の還付を受けることができるようにするスキームで、けっこう流行っていたようです。

これらのスキームは、税制改正によって封じ込められました。

それと、2021年3月にホワイトデーショックとして話題にのぼった「低解約返戻金型逓増定期保険」についても租税回避といっていいのではないでしょうか。

この保険は、会社が役員に資金を移す際に、税金の面で有利になるように設計された保険を用いたスキームですが、法人が損失を被る取引なので、不自然な取引だとも捉えられるのです。

法律違反ではないが・・・

もちろん、前述のように租税回避は法の穴をついて行われるのであって、その行為自体は法律違反ではありません。法律に書いていないものに課税するのはおかしいという意見も一理あります。

しかし、例えば法人税法には、同族会社の行為計算否認規定というものがあり、この規定をもって租税回避行為を否認されるおそれがあります。(同族会社の行為計算否認規定は、伝家の宝刀といわれており、めったなことでこの規定が適用されることはないですが)

そして、不自然な取引をするのは、やはりどこか気持ちが悪いものです。

「どうしてこのような取引を行ったのでしょうか?」と問われたときに、「税金を払いたくないから」以外に誰もが納得する理由を説明できればいいのですが、なかなかそれは難しいと思います。

「違法でなければなやってもいい」と単純にわりきることができません。

例えが違うかもしれませんが、あなたは、「違法でないのなら脱法ドラッグを使用してもいい」と思いますか?

それは税理士の仕事なのか?

もしかしたら、租税回避行為を推奨する税理士がいるかもしれません。

違法ではないので、それで顧問先の納税額が少なくなり、顧問先もそれを望んでいるのであれば何も問題が無いのかもしれません。

なかには租税回避スキームを作るぐらいでないと優秀な税理士とは言えないと豪語する方もいらっしゃるようです。

しかし、私は租税回避を絶対に推奨する気にはなれません。

消費税法の解説では右に出る者がいない程高名な税理士の熊王征秀先生は、著書の中で上述の自動販売機作戦について触れ、

実際問題として、我々税理士は、ここまでテクニカルに申告をしなければいけないのでしょうか・・・? ならばいっそのこと、法律を改正して「課税選択による居住用賃貸物件の還付はダメ」と定めてしまった方が、よっぽどスッキリすると思うのです。

出典:熊王征秀『クマオーの消費税トラブル・バスター』151頁(ぎょうせい、2008)

と述べられています。

熊王先生のこのご意見は、その後の消費税改正によって実現されました。

私も、このように租税回避といえるようなスキームを使って申告することは、はたして税理士の仕事なのだろうか?という疑問を抱かざるを得ません。

積極的に租税回避を狙うようなお客様とは契約しませんし、契約中のお客様がどうしても租税回避を行いたいとおっしゃるのであれば、契約解除ということになるでしょう。

仮に、租税回避を狙う税理士が良い税理士だと定義づけられたとしたら、私は不良税理士としてやっていきます。